2013年8月17日土曜日

早産時特有の病気 未熟児網膜症とは

未熟児網膜症(みじゅくじもうまくしょう)とは



網膜の血管の未熟性に基づく疾患。赤ちゃんの眼は妊娠第3週ころにできはじめ、眼球の形がほぼ完成するのが7週ごろと言われています。また光の刺激を脳に伝える神経の膜である網膜(もうまく)もこの時期には形成されていて、そこから伸びる視神経も神経管を伝って大脳にまで到達しています。網膜を養う血管は妊娠16週以降に視神経乳頭部から網膜の外側へと発達し始め、赤ちゃんの網膜の血管は在胎36 週頃に完成します。

そのため予定日より早く生まれた場合は、網膜の血管は途中までしか伸びていない為に、血管の伸びが途中でとまってしまい、血管が枝分かれしたり、眼の中心にむかって立ち上がったりと、異常な発達をすることがあります。これを未熟児網膜症といいます。
 
 

未熟児網膜症の発症の確率

 
 
「未熟性」に基ずく多因子の非特異的反応(刺激がどのような種類であるのか関係なくおこる反応のこと)であり、「未熟性」の因子としては在胎週数と出生体重が最も重要な因子であり、在胎30週以下、1000g未満の児では発症の危険率が高くなると言われています。
原則的には自然寛解(しぜんかんかい)する疾患ですべての児に網膜の瘢痕形成(はんこんけいせい)が起きてくるわけではなく、生まれたときの体重が1,800g 以下、在胎週数34 週以下とハイリスクがある場合は、眼科医による眼底検査を受ける必要があります。
 
発症率は出生体重1,500g 未満で約50%

 
在胎28週未満ではほぼ100%です。
 
 
両目完全失明率は約0.7%とのデータもあります。
 

原因は?

 
胎児が予定より早く生まれてしまったため、網膜血管の発達が終わっていない為に生じます。
早産児の肺低形成による治療などの酸素投与が主な原因であり、要因の1つと考えられていたがこれだけが原因ではないと言われています。1950年代初期には、網膜血管の増殖性変化をきたすと考えられていたが、現在では、酸素投与とは無関係に発症する事もあると言われています。厳密な酸素投与を行う事で1500g以上の児の未熟児網膜症は減少している傾向がみられるが、超低出生体重児での発症例は減少していないみたいです。
また要因の一つとして考えられる高濃度の酸素の投与も高濃度の酸素はこれから伸びていこうとする網膜の血管を収縮させてしまい、これがある程度以上続くと血管の先端部が閉塞してしまいます。子宮の中から体外にでるだけで、赤ちゃんがさらされる酸素の濃度は2~3倍になり、これだけでもまだ発達途中だった網膜の血管は収縮してしまいます。未熟児の場合多くは保育器の中で高濃度の酸素が投与されるのでさらに血管が収縮し、閉塞を起こしてしまうという環境を必然的に作り出してしまう可能性があります。
また保育器の中にいる間は高濃度の酸素のために、血管が閉塞しても、酸素は十分行き渡り、血管ができていない部分の網膜も酸素が足りている状態になります。しかし、酸素の投与がなくなると、血管のない部分の網膜は酸欠状態になってしまいます。
 
この酸素不足を解消するために、血管を伸ばして酸素を供給しなければならないのですが、延びるべき血管が閉塞してしまっているために、その周囲から新生血管という、未熟で異常な血管が周囲に向かって伸びて行きます。この新生血管は非常にもろく破れやすいので、出血をしたり、重症例では、伸びていくときに、線維性の組織を伴って伸びてゆくので、これが収縮して網膜を引っ張り網膜剥離を起こしてしまうということが原因のひとつとして考えられます。

 

症状は?

 
在胎週数34週未満、出生体重が1800g未満の低出生体重児に起こり易く、生後3~6週ごろ発症するといわれていますが、網膜の中で起こる変化なので外からは一切わかりません。
未熟児網膜症には、徐々に進行するタイプ(型)急速に進行するタイプ(型)に大きく分類されています。
 

徐々に進行するタイプ(Ⅰ型)

型は進行の程度によって5段階に分類されます。
  • 1段階では、伸びている網膜血管の先端部と血管の伸びていない網膜(無血管野)との境界部分に境界線とよばれる組織ができます。
  • 2段階では、境界線の厚みが増します。
  • 3段階では境界部に異常な血管である新生血管ができ、増殖した組織が硝子体に向かって伸びていきます。
  • 第4段階さらに増殖組織が増すと、網膜をひっぱり網膜剥離(牽引性網膜剥離)を起こします。
 

急速に進行するタイプ(Ⅱ型)

型は在胎週数が少ない1000g以下の超低出生体重の赤ちゃんに起こりやすく、急速に網膜剥離へ進行して失明する危険の高いタイプです。網膜症を発症した赤ちゃんのうち5%くらいは急激に症状が進んで網膜が剥離し失明してしまうラッシュ型といわれるこの型といわれています。
そのため、このラッシュ型といわれるタイプは失明を予防することは困難といわれています。
 
 
 
未熟児網膜症が治癒した小児には高頻度で近視や斜視、弱視等の症状が起こるといわれています。どの程度の視力障害がでるのかは、瘢痕の程度によると考えられていますが、正確に把握することは困難と考えられています。 
 
 

治療方法

 
 
未熟児網膜症の発症原因を高濃度酸素だけに限定することはできませんが、酸素の量を制限することで患者数が激減したことから、酸素投与の適正管理による予防効果は高いと考えられています。未熟児で生まれた小さな命を救うために酸素は必要ですので、重症化を防ぐように酸素管理を行っています。
また点滴の量も要因のひとつと考えられています。体内にはいる水分の量が多いと網膜が浮腫(むくみ)を起こし網膜剥離を起こしやすくなると言われているためNICUでは、小さな命を、障害を残さないように救うために酸素の管理、点滴の管理を行っています。
 
生後2~3週間ぐらいから定期的に眼底検査を行い、網膜症を発症しているかどうかや、進行の程度を検査します。
軽症の場合は途中で進行が止まり自然に治癒することが多いので、治療を必要とすることはあまりありません。しかし、
予防がうまくいかなかった場合は、網膜症の進行を抑えるために光凝固法・冷凍凝固法という眼科手術が多く行われます。現在では光凝固法と呼ばれるレーザーによる治療方法が主流のようです。どちらの治療方法がよいというデータは調べる限りでは出てきませんでした。
いずれの治療法もまだしっかりした治療効果の判定が行われていないので効果に関しては論議がある。また極小・超未熟児の未発達な眼の組織をレーザーや液体窒素で固めてしまうことが将来の眼の機能にどのように影響を及ぼすかと言う点もまだはっきりと確認されていません。
 
定期的に検査を受け、時期にあった治療を受ける必要があります。進行具合によって治療法が変わるといわれています。
 
 

光凝固法

 
患部にレーザーを光線を当て、網膜のたんぱく質を凝固させることで、病気の広がりをとめる治療方法。
 

冷凍凝固法

 

 
液体窒素で眼球の外側からマイナス60~70度の低温を加える方法。
 
 

 


 

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